今回取り上げる本

未来を実装する テクノロジーで社会を変革する4つの原則

馬田 孝明 英治出版(2021)

この本は、「テクノロジーの社会実装の方法論」を提示しています。

ポイントは、

という『テクノロジーで社会を変えていこう』が主題です。

”今の日本に必要なのは、注目されがちな「テクノロジー」のイノベーションでなく、

むしろ「社会の変え方」のイノベーションではないか”

未来の理想「インパクト」を描き、その未来を作るヒントとして、

企業もソーシャルセクターの知見やツールを取り入れていこう

というのが他書に見ない新鮮なところです。

著者は、まず社会を変革する4つの原則と1つの前提を示し、

各章の解説を進めています。



社会の足元(とあえて呼ばせてもらいますが)の課題解決には、

NPOやNGO、市民団体が行政等パブリックやステークホルダーとの

折衝活動、政策提言を行っています。

その活動は、企業のパブリックへのロビー活動よりも長けているので

ソーシャルセクターが合意形成から社会への実装に至るまで活用しているツールや

手順などを企業が積極的に取り入れるべきである、と述べています。

ソーシャルセクターの方法論を学ぶことによって、

“ビジネスによって社会を変えるだけではなく、

社会を変えることによって新たなビジネスを生み出す”

可能性を説いています。

これは、企業‐NPO‐市民‐官‐学等のセクターの境界を融合した

ソーシャル・イノベーションを標榜する私にとって

心強い一冊となりました。

現在、当社が参加している武蔵村山市「中原元気プロジェクト」

企業にとっては、「場の提供」というまだ第一段階の<支援>の立場にあります。

その提供された「場」を活用して、NPOがパブリックと連携・協力を得ながら、

積極的に表面化していない市民独自の活動を掘り起こしネットワーク化を推進しています。

他のブログ記事でも課題提起をしていますが、

企業担当者にすれば、黙ってみているだけでは実利は入ってきません。

第二段階は、この活動の中に、「地域市民」として混じり地域の生の声を聴くことで

ビジネスの機会を見出し、実利を獲得しながら、地域に貢献できるはずです。

第三段階は、企業が地域市民として、すぐ近くの「当たり前にいる存在」になることです。

多様なステークホルダーとの合意形成、そして進むべきステップ、インパクトをソーシャルセクターのロジックモデル等を活用して共有していこうと、この本から学びました。

ロジックモデル

人口減少、超高齢社会、IT・AIのデジタル社会が伸長し

主役はサプライサイドからデマンドサイドに転換しています。

生き残り、ゴーイングコンサーンのためには、

新しい世界観、異なるセクターの境界が融合したモデル

最終的に社会変革(ソーシャル・イノベーション)を起こしていくもの

と考えてやみません。

先日、カメラを廻しながらインタビューをする機会がありました。

その時、思い出したのです。

今から12年前位の独立して2,3年目のちょうど今頃、

夏季休暇を挟みながら1カ月間ある営業組織の

密着ドキュメンタリーを撮っていたことを。

目的はその組織の強さの秘密を探ること。

15人弱の組織でしたが、

車の中で、新幹線の移動中の車内で、

夜の打ち上げ飲み会の席で、

お客さまを相手にした営業の現場で、

そしてお客さまを招いての一大イベントにも

同行させていただき、カメラを廻し、

夜はお借りした資料とメモ書きを分析し、

強さの秘密を明らかにした本当のドキュメンタリーでした。

(余談ですが、コンサルタントがドキュメンタリーを撮り分析・解説までしたDVDは大ヒットでした)

ドキュメンタリーは生モノだし、

撮ってみないと上手くできるか分からない。

上手く、というよりも、何が正解なのか、何ができるか

撮り終わらないとわからない。

ノンフィクションの醍醐味!

会話をしながら、その人の考えを訊いたり、

その人の表情や、手振り身振りまで観察しカメラにおさめる。

その人の本質に触れられるかどうかは

インタビュアーの腕に掛かっているんだな、と。

ちょっと待て!?

インタビューと言ったが

これって、ドキュメンタリストなのじゃないのか?

ドキュメンタリストとインタビュアーは

何が違うのだろうか???



ドキュメンタリストというと、

社会問題にカメラを持って切り込む、そんなイメージがある。

インタビュアーには取材相手がいて

本来はその人の本質を引き出すのが仕事である。

カメラを自ら廻しながらが、動的に撮るのがドキュメンタリスト

相手の目線を感じながら、静的に話しを訊くのがインタビュアー

そんな分け方で良いのだろうか?

いやいや、インタビュアーも最近ではミニカメラ廻すし。

訊き手本人が映り込むのがインタビュアー?

ドキュメンタリストもカメラに映り込むこともあるし。

この時代に、分けて考えること自体がナンセンスなのだろう。

職業名を分けるどころか、

玄人と素人の境界もなくなってきている。

かくいう私も何をやっているのか分からない。

領域、境界なんて、もうない時代なのです。

私個人の結論としては、

どちらも私であって、出来るだけ好きなこと仕事とし

肩書きなんて、その場その場でいいように言っていこう。

 

『スマートスキン』って知っていますか?

名称は聞いたことがなくても、ほとんどの方が触っています。

スマートフォンの画面で、指使って文字や画像を大きくしていますよね。

あれです。

あれをスマートフォンが世に登場する前に開発された方が

東京大学大学院教授・ソニーコンピュータサイエンス研究所副所長の

暦本純一氏です。

今回は、暦本純一氏の

「妄想する頭 思考する手 ~想像を超えるアイデアのつくり方」

の超・単純化したご紹介と私がこの本から何を引き寄せたか、を綴ります。

 

【社長の本棚を書くひと】

妄想系コンサルタント(株)コミュニティデザイン研究所の杉本です。

経営者・次世代幹部の方々が孤独に温めているビジネスプランのお話しをお聴きし、自信を持ってカタチにしてもらう仕事を(も)しています。

これまでご担当させて頂いた多くの方々が成功され、昇進し、定年退職までお見送りして参りました。

「イノベーションのスタート地点には、必ずしも解決すべき課題があるとは限らない」

いきなりしびれる一節が飛び込んできます。

多くの企業などが取り組んでいる「課題解決型イノベーション」がある一方、何の役に立つかわからないもの(開発時点のスマートスキン)、やりたいことをやりとおすイノベーションもあるということ。

暦本氏いわく

”現時点では誰しも「正しい」と認める目標が、数年後には意味をなさなくなる可能性もあるし、新しい課題が出現する可能性も常にある。だから、今の時点で「正しい」とわかっている課題の解決だけを目指せばよいというものではない。”

つまり、

”課題解決型の真面目なやり方だけでは、予測不可能な未来に対応するイノベーションを起こすことはできない。”

そして、

”想像を超える未来をつくるために必要なのは、それぞれの個人が抱く「妄想」だと私は思っている。”

例として、誰も課題を感じていないのに、世の中の大きなニーズを引き出して大ヒットした商品として、古いがソニーのウォークマンを挙げている。

「素人のように発想し、玄人として実行する」

暦本氏が引用したロボット工学やコンピュータビジョンの世界的な権威のカーネギーメロン大学の金出武雄氏の言葉です。

金出氏は、「ロボットに目を授けた男」と呼ばれ、顔認証システムの論文を世界で最初に書いた人で、1995年には自動運転を実験してそうです。

発想は大胆に、でも実現をするためには高い技術力が必要だ。というです。これを暦本氏は、研究テーマの良し悪しを評価する際に、発想の大胆さを「天使度」、技術の高さを「悪魔度」として次のようなマトリックスを作っています。

このほかに、発想法とその収斂の仕方について書かれていますが、

攻殻機動隊好きにはたまらない内容が後半に書かれています。

さて、ここから私が引き寄せた、いや今回は決意かも、は・・・

一応、妄想系コンサルタントと称していますので、

PDCAやKPIなどでがんじがらめになっている、

本来ならイノベーションの担い手になるであろう

若い人たちの脳をどう柔らかくしてあげらるか?

「そんな発想していいのですか?」「でも、上司に怒られそう・・・」

「そんなこと言われても現実は・・・」

これじゃ、まるで進撃の巨人の壁の中です。

私のお役目は、彼らに壁の外の世界を見てもらうこと。

そのためには壁を壊さなければなりません。

そうです、私のお役目は、経営層の意識改革で、

彼らに妄想からのイノベーション経験をしてもらわねば

壁の撤去などありえません。

彼らも若い時、妄想していたに違いありません。

彼らに寄り添って、妄想の火をふたたび燃え上がらせる

それが私の仕事。。。

ストックセールスという言葉はお聞きになったことはありますか?

コンサルタントの神田昌典氏が監修した海外のセールスモデル研究本で、既存顧客との関係維持、アップセル・クロスセルを考えている方、成熟市場での営業施策を考えている方にお薦めです。

顧客が雪だるま式に増えていく「4つのメッセージモデル」という副題がついていますが、超・端的に内容をいうと、新規営業だけでなく、既存顧客にも目を配らせていますか?というのが文脈です。

ただ単に書評したり、図式するのは芸がないので、わたくしがこの本から引き寄せた(読んでどう感じ、解釈処理して、使っていこうか、ということをいいます)ことを述べたいと思います。


【社長の本棚を書くひと】(株)コミュニティデザイン研究所の杉本です。

経営者・次世代幹部の方々が孤独に温めているビジネスプランのお話しをお聴きし、自信を持ってカタチにしてもらう仕事を(も)しています。

これまでご担当させて頂いた多くの方々が成功され、昇進し、定年退職までお見送りして参りました。

「ストックセールス」の概要・要点から

マーケットシェア拡大のための顧客獲得のセールス法の書籍は多々見られると思います。この本は、既存顧客関係構築のためのセールス法で確かに珍しいです。

成長フェーズから成熟フェーズに入っている市場に対しては、マーケットシェアからカスタマーシェアをみるべきである。

・BtoB企業の営業・マーケティング予算の70%は新規営業案件(デマンド・ジェネレーション)に充てられていて、30%は既存顧客維持・単価アップ(セールス・イネーブルメント)に充てられている。

上記のデータは、海外のものなので日本に当てはまるかは分かりませんが、話しは良く分かると思います。「釣った魚に・・・」です。

・既存顧客への営業/セールスは、もっぱら「契約終了前」に行われる。

・既存顧客への営業/セールスは、新規営業案件とは違うものでなければならなず、使うトークや順番が変わってくる。

・既存顧客に使う4つのシーンは、

 ①取引継続・更新を促すとき

 ➁値上げを働きかけるとき

 ③取引拡大を提案するとき

 ④謝罪するとき

としています。

・上記4つのシーン別に、「何を」「どの順番で」が実証実験データから述べられています。

詳しく記すことはネタバレになるのでしませんが、ここから

わたくしが何を引き寄せたか

くのマーケット(ボリューム・スケール)は成長期から成熟期に入っています。成熟期だとすれば、本来は既存顧客を維持し、契約更新をスムーズに行い、出来ればアップセルやクロスセルを提案すべきところが、営業といえば「新規案件獲得」がまだまだ大手を振った状態になっています。新規案件獲得に奮闘している間に、大丈夫だと思っている「既存顧客」が他社にスイッチしてしまう機会を与えてしまっているのではないでしょうか。

「売る(売り切る)」モデルから「顧客関係維持」モデルへの転換です。メンテナンス部門・アフターサービス部門だけでなく、売った張本人の営業の既存顧客廻り等も「営業指標」に取り入れるべきであると思います。

わたくしは前職の住宅営業時代、決して優秀ではありませんでしたが、売れる様になったのは、既存顧客からの紹介です。何千万円もするマイホームづくりを他人に紹介するというのは、とても勇気がいることだと思いませんか。新規の見込み客は、若手にフォローを任せて、わたくしはもっぱら既存顧客への顔出し、お茶飲み、ご家族と夕飯をご馳走になってくる、ことをしていました。BtoCならではかもしれませんが、既存顧客がわたくしを表彰式に行かせるために営業もしてくれていたのです。既存顧客は宝なのです。

また、IoTが普及してきている現在、顧客関係維持からの発展(アップセル・クロスセル)がよりやりやすくなってきていると思います。たとえば、ご周知かと思いますが、先行事例を2つご紹介します。

IoTを利用した顧客維持提案モデル

<電灯をLEDに変える提案モデル>

LEDを「売り切る」のではなく、EMS(エネルギー・マネジメント・システム)と合わせて、どれだけ省エネに貢献するかをコミットし、成功した省エネ分の〇%の報酬をもらうモデル。

<営業車などの自動車リースのドライブレコーダー提案モデル>

あおり運転や事故などの証拠・解析用にドライブレコーダーを営業車に取り付ける(だけの)モデルから、車のエンジンなどの情報、運転者のクセや運転状況をレポートし、ヒヤリハットなど安全運転促進のための提案モデル。荒く乗りがちな営業車の状態をなるべく未然に察知し、修理・交換を促すだけでなく、程度の悪い運転者には教習所通いを勧めたりもしています。(ご存じない方用に参考としてオリックス自動車にリンクしておきます)

既存顧客とIoTで繋がっているからこそ、安心して新規案件獲得へ、だけでなく、既存顧客との関係をより密にし、信頼獲得と売上アップの提案営業が出来る機会を得た、と考えてビジネスモデルを再構築されてはいかがでしょうか。

まとめ

成熟市場にあっては特に、既存顧客への営業コストを怖がってはいけない

新規案件獲得セールス(トーク)と既存顧客へのそれは別物である

既存顧客とIoTで繋がれているとして、ビジネスモデルを再考する